Track:3 風俗店ボーイ編|「父が勝手に作った50万円の借金と、決別の話」

「まだ仕事は決まらんのんか?」
ブラック企業は辞めたのに、家に帰ると、今度は父が僕を追い詰めてきた。

夕方、父の車はいつもパチンコ店の”いつもの場所”に停まっていた。

ある日僕宛てに銀行から通知が届いた。
「借入金50万円」
封筒を開けた瞬間、胃のあたりが冷たくなった。
すぐに父だと悟った。

“何かあった時のために”のはずが、何かあったのは父の懐だった。

👉「父からの搾取全集」としてnoteにまとめている。

怒りの感情だけが僕を動かした・・・

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目次

🎞 第1章:逃亡 ― 娘を残して夜を走った日

携帯は止まっていた。
タバコを買って、ポケットに残ったのは二百円。
それでも、車のガソリンメーターは三分の二。
「燃料があるうちは、まだ生きられる」
そう思って、夜の国道を走り出した。

家には、幼い娘と、いつもの静けさ。
でもその夜、僕は帰らなかった。
後ろめたさよりも、空腹と眠気が勝っていた。
人間は、本当に限界まで追い込まれると、正しさより生存を選ぶ

「とにかく街へ行こう」
ハンドルを握りながら、FMラジオのノイズがやけにやさしかった。
頭の中ではローリング・ストーンズの「Tumbling Dice」が鳴っていた。
当時の僕にはぴったりだった――転がるサイコロ。
止まることが、いちばん怖かった。

繁華街の掲示板で、紙切れの求人広告を見つけた。
“キャスト募集中”の横に、小さく書かれていた。

【男子スタッフ募集中 寮完備 日払い可】

「これだ」
というより、「これしかない」。

携帯は使えないから、公衆電話に百円を入れた。
受話器の向こうの男は、思ったよりあっさりしていた。

「すぐ来れるか? 面接しよう」

夜10時を回っていた。普通なら怪しい。
でも僕の“普通”は、もう燃え尽きていた。

店の前に着くと、ドアが開き、
パンチパーマの男が出てきた。
金のネックレス、サンダル、笑顔。
その全部が怖かった。

「おう、腹減っとるやろ。ご飯食べて行きな」

その一言で、涙が出そうになった。
人は、どんな場所でも優しさの順番を忘れない。
その夜、僕は即採用された。
寮の布団に倒れこみ、天井の染みを見ながら思った。

「ああ、生き延びた」

娘の顔は浮かばなかった。
あのときの僕は、思い出す余裕さえ捨てないと、生き残れなかった

🎷 第2章:ボーイ時代 ― 優しさの代償

午後2時、出勤。
看板の電気はまだ消えている。
玄関の前にしゃがみこみ、タバコの吸い殻を一本ずつ拾う。
この店では、「吸い殻一本が信用を落とす」と言われていた。
軍隊かと思った。いや、軍隊よりも声が大きい朝礼が始まる。

「お客様第一! 感謝! 誠意! 押忍ッ!!」

壁が震える。
社訓という名の呪文を叫びながら、
僕は“生きる場所を間違えた”という感覚を笑いに変えていた。


☀️ 昼営業

昼の仕事は送迎ホール業務
キャストの送り出し、客の案内、掃除。
使用済みのおしぼりを洗濯機に放り込みながら思う。

お店ならではのタオルを見ても、もう驚かなくなる。
人間は慣れる生き物だ。どんな匂いにも。


🌆 夜営業スタート

午後6時、ネオンが灯る。
客が帰ったあとのソファを整え、
灰皿を拭き、テーブルを消毒。
バックヤードでは「新人はキャストと会話禁止」。
話すのはダメ、でも挨拶の声は誰よりも大きく

「おはようございますっ!!」
「おつかれさまですっ!!」

ホールに響く声の熱量だけが、僕の居場所を示す地図だった。
男子スタッフ同士がすれ違う時は、「押忍!」。
全員が格闘技の選手みたいだったけど、戦っていたのは人生だった。


🍛 休憩時間

午後10時、ようやく休憩。
地下の食堂で、バイキング方式のまかない飯
唐揚げ、焼きそば、カレー、味噌汁。
どれも格別にうまい。
味じゃなくて、“今日もここまで生きた”という実感がスパイスだった。


💴 日払い

働いた分は日払い。
だけど、新人の日払い上限は2000円。
それ以上は「頑張って貯めとけ」と言われる。
2000円でも、当時の僕には“明日を買える金”だった。


🌙 深夜3時

閉店後、送りの車を見送る。
熊本から来た先輩スタッフと深夜の公園でビールを飲んだ。
彼は元経営者だった。
熊本に残してきた家族との写真を嬉しそうに見せてくれた。


沖縄出身の男は、昔、土木で事故に遭ったと言っていた。
みんな“何かを失った人たち”ばかり。
でも、全員が誰よりも優しかった

「押忍、今日もおつかれっす」
そう言って肩を叩き合う瞬間、
この世界にも、確かに人間のぬくもりがあった。

午前3時、寮に帰る。
ベッドに倒れこみ、目を閉じると、
遠くでまたネオンがチカチカと瞬いている。

それが、僕にとっての月明かりだった。


🎸 エピローグ

“汚れた場所”でしか見えない“純粋な優しさ”がある。
あの頃の僕は、それにすがって生きていた。

風俗店の裏方は、社会の外れに見えるけど、
実際は人間の“内側”がむき出しになる場所だった。
泣き顔も怒鳴り声も、そこには“生きようとする力”があった。


🎧 今日の一枚:The Rolling Stones『Exile on Main St.』

ローリング・ストーンズが亡命先で録ったアルバム。
“家も居場所もないまま音を出し続ける”――それが今の僕そのものだった。

「Tumbling Dice」は、転がるサイコロの歌。
僕はその夜、転がりながらも笑っていた。
転がること=生きている証拠だった。

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エピローグ(その後)

僕が家を出た後、父は元妻を呼び戻したらしい・・・

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この記事を書いた人

こんにちは!52歳、スクールバス運転手です。
転職10回以上の経験から、現場のリアルや笑える失敗談をお届けしています。
「働くって大変。でも、ちょっと面白い」そんな空気を一緒に味わいましょう。

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